読んだもの雑記

主に漫画の感想を書いていきます

この度の訃報に接しー山本文緒

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サイン本と「週刊朝日」小倉千賀子対談(03.12.09)


今月は訃報が多いな…と思っておりましたが。

今日は!さすがに!リアルタイムで書かずにいられない!

山本文緒急逝。58歳。

自分が30代の時に一番好きな作家が山本文緒でした。

文庫版『みんないってしまう』が99年7月に上梓されて(自分は当時30歳)。

人の心の昏い部分を絶妙に活写する作家が大好きなので、最初に読んだ作品集が

『みんないってしまう』だったのは本当に幸運な出会いでした。

以降、当時出ていたタイトルは大体読みました。コバルト時代は

リアルタイムでは存じ上げませんでしたが、復刊されたものはすべて

読んだはず。01年に重松清と直木賞W受賞。お2人、同学年なんですよね。

当時は重松清のファンでもあったので狂喜乱舞しました

(多作すぎて『流星ワゴン』単行本あたりで脱落。タイトル名で内容が思い出せなく

なってきてしまったので飽和量を超えました。ただ、04年の鷺沢萠『ビューティフル・

ネーム』文庫の解説が秀逸で、ここで言及しています)。

受賞作のひとつ前、「落花流水」発売記念のサイン会@三省堂本店に行ってます。

時系列ではあるけど複数の人物視点で、いい具合に次の展開を忘れてしまうので

5~6年に一度読み返してます。

と、久しぶりに手に取ったら一番近い年次は第六章「また夢をゆく」(2017年)で

ヒロイン手毬は57歳。冷蔵庫の中の子機。あうあう。

それなのに。なぜ新作から遠ざかってしまったかというと。

離婚後シングルのまま行くのかなーと思ったら割とサクッと再婚

(共著を出してる伊藤理佐にもサクッと再婚ぶりに「お、おう」となった記憶)。

加えて「実はこの2人セックスしてました」が種明かし的に配された短編があり

「いやいや、そりゃないだろ」と。「信頼できない語り手」手法は知ってるけど

この語りは違和感あるだろさすがに…と思ってしまったことがあり。

その後の久々の長編「なぎさ」終盤の種明かしも「ほーん」と思ってしまったような。

「あー『恋愛中毒』の構成に似ていて、かつインパクトが弱いな」と(何様目線)。

で、その後はコバルトの復刊があり、7年ぶりの長編『自転しながら公転する』。

この2つが未読なうちに、ほぼ13年ぶりの短編集『ばにらさま』が先月上梓。

つまり今日は何か月かぶりに出社しましたが、帰りに『ばにらさま』買いますよね。

『みんないってしまう』は表題作の仕掛けが「おお」という感じでしたが

今作は基本全編に仕掛けありとのこと。読了。

うん、今回はいい感じで意表を突かれました。

ちなみに最後のタイトル「子供おばさん」。

「線路沿いのマンションで、一部屋と台所だけの小さな部屋で犬と暮らしていた」のは

それ、オレだよ!とつっこんでしまいました。

ゴールデンではなくトイプー2匹とではありますが。

飼い始めたのは自分は43歳、作中は41歳。なんか、わかるー。

※ビミョーにネタバレしきってないつもり…。

今年の6月ごろにオカヤイヅミ『白木蓮はきれいに散らない』を読みましたが

「同級生の遺産」ネタがすんなり出てくる年齢になってきた感じでしょうかね、

アラフィフとは(たまさか、こちらも47歳)。

いやいやいや、アラフィフて。アラカンて。平均寿命まで20余年。

嘘でしょという思いと、今月刺さった訃報にアラカンがちらほらいらして

打ちのめされる。そんな世代なのか。

50代になっても伝記系に行かず、ストイックと引き換えの寡作で

あくまで「今」を描き続けた作家。唯一無二。老境の作品が読みたかった。

※成功している直木賞の先達、林真理子が『ミカドの淑女』を書いたのは46歳の時。

伝記ものは大向こうにウケがよく、現に『西郷どん!』で大河原作だから、

有効な戦略ではあるのです。。

 

『みんないってしまう』。

こんなに早く、あなたが。

でもいずれ、私も。

答えが探せずに、そして探していたこともいつか忘れたまま、きっと。

でも、犬がいるうちは生きてないとなぁ。この項終わり。

 

<追記>別立てで書く機会を逸したので、こちらに。

この月は訃報が多く、ものすごく驚いたのが突貫工事!おじろう組の里中守さん。

多分59歳だったはず。若い頃に一緒に遊びまくったTONOさんのお悔やみが染みる。

TONO on Twitter: "あの人はきっとすごくきれいなおばあちゃんになるだろうと思ってましたが、もう歳をとらないのだと思うと、不思議ですね。" / Twitter

「緑野原学園」シリーズの星野架名さんは年齢が公表されてて58歳。

書き手ではないですが内田春菊初期エッセイの常連にして2番目の夫・O久保さんと

今のところ最後の彼氏さんの訃報も驚いた。彼氏さんは40代なのかな…? 早い。

アラカンではなくアラコキですが増山のりえ氏の訃報も驚いた。

「大泉の話」刊行が4月21日で、亡くなったのが6月30日未明(推定)。

不謹慎だが、亡くなったのが先だったら刊行されていただろうかとも思う。

「死人に口なし」状態のところに暴露本を出すモー様ではないと思うので

(いや差し止めするとしたらそれはそれで大変だったと思うが)。

いずれにしろ後味の悪い結末感半端ない。

この追記を書いている今は、父の新盆供養の手配中なので

訃報についてもこの時とは別の感慨があります…。