読んだもの雑記

主に漫画の感想を書いていきます

わかれる昼に

某月某日。某氏2名と某所で待ち合わせ。いいお天気。
タクシーを拾う。
「××寺まで」。
駅から10分足らず。
砂利を踏み、中の人に呼びかけ線香を分けてもらい、案内される。
「××家××…」
立ち止まり、無言で見つめる。
今日は墓参の道行きである。
昨年9月4日の日記で触れた訃報の人物が、ここに眠っている。
各々、その人が好きそうなものを持参し、供え、手を合わせる。黙祷。
間が空いて、やがてポツリポツリと誰からともなく
当時の気持ちがこぼれて出てくる。
「とにかく、残念としか言いようがなくて」
「自分は、担当を離れて、会わなくなって久しいタイミングで
急に訃報を聞いて。
つまり、目の前から突然いなくなったわけではないから、
今でもどこか別の場所で、似たような職業で
働いてるんじゃないかっていう気がして」
「とにかく、実感がないんです」
某氏がいつも「○○ちゃん、○○ちゃん」と呼びかけていたので、
私はその人の本名を知らなかった。
よもや、板塔婆と戒名で確かめることになるなんて!
墓石に刻まれた名は、間違いなくその人が存在していて、
かつて生きていて、そしてもう亡くなったことの証にほかならず。
つまり私たちはその人の死を確かめるために、
その人に会いにきてしまったのだ。
去る前に、もう一度3人で手を合わせる。
そして、見つめあい、また砂利を踏んで寺を辞去。
ちょっとだけ具体的に書くと、今の職場にいる人のほぼ誰よりも前から、
私と某氏はその人にお世話になっていた。
最後に「ありがとうございました」とハッキリと口に出して、一礼した。

訃報から半年を経て。何故このタイミングで墓参りなのかというと、
某氏がもうじき職場を離れることが決まったからなのだった。
「みんなみんな、オレ(=とことこ編集者)を置いて、
去っていってしまう。
某氏、オレはさびしいよ!」
新しい門出なんだから「おめでとう」って言ってあげなきゃいけないのに。
「残る方も去る方も、さびしいですよ」
某氏が答える。どちらが、よりさびしいのかはわからない。
明日は早くも、祖母の一周忌。
この春は図らずしも、死者と生者を見送る季節になった。
表題は立原道造の詩の題名を拝借。