読んだもの雑記

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不在の旅

某月某日。常磐スパリゾートハワイアンズに一泊二日。
メンバーは父母自分、兄一家、そして叔母。その叔母がオール旅費持ち。
いやっほう。
我が家とハワイの関係は深い。といっても最近の話で、
9年前に父が定年退職した時、兄妹で両親の旅費を負担して
5泊7日の慰安旅行。初ハワイ。
そして兄の結婚式も、景気よくハワイ。
義姉一家は両親、義姉、親友の女子1名(彼女と私が相部屋になった)。
こちらからは両親、兄、私(自分だけ旅費全額負担)。
その時、叔母夫婦も招いたのだ(私が呼んだんじゃないけど)。
「お祝い事だから、一緒にどう?」と。
しかし「先生(叔父)が飛行機が苦手だから、遠慮するわ」という返事。
あれから早幾星霜、兄家にはチビも誕生し
ハワイデビューはまず国内で、ということに。
ドンドコドコドコと鳴る太鼓の音に涙し(怖かったらしい)、
それでも大勢の人と一緒にステージに上がってフラを踊り。
ちなみにママ(義姉)もばぁば(母)も、
フラダンスを習っている人なのだった。
その時自分は何をしていたかというと。観客席に陣取りつつ、
居眠りしてました。
正直、スケジュールがキツイ時期だったのだ。
しかし、叔母の誘いとあるからにゃ、それもアゴアシ付きならば。
自己負担なしで初めて「ハワイ」に行けるチャーンス。
ひと眠り後、夕食はバイキング。酒。熟睡。
翌日は流れるプールを兄家と共に3周してきました。
大型バスに乗ってターミナル駅へ。もう夕方。
駅ビルで、早めの晩ご飯。
「ここは、ウチが出すわよ」「いや、ウチが」と
母・兄が財布を取り出す中(私は高みの見物)、叔母がキッパリと言った。
「これは、先生の遺言だから」
「!」(一同)
「亡くなる5日くらい前に、苦しい息の下で『皆さんにお礼をしてくれ』って
言われてたの。『優しい皆さんに、いつも旅行に誘ってもらって、
本当にお世話になりましたから』って」
亡くなって、これだけ時間が経てばもうひと通りの手続きは
終わっているから、パーッと遊びましょう、としか聞かされていませんでした。
でも、そうではなくて。
この旅行自体が、叔父の遺志だったのです。
唐突に、数年前のことを思い出しました。
「飛行機が苦手」っていう話だったけど、
確かに海外旅行には遂に出かけなかった叔父だけど、
国内線には乗ってたじゃん…。
なぜ、今回の旅行が思い出の場所ではなくて、
初めてのハワイアンズになったのか。
もしかしたら、叔父夫婦は本当はハワイ旅行に一緒に行きたくて、
でも、考えに考えに考えて、参加を見合わせたんじゃないのか。
「飛行機が苦手」を完全に真に受けてました。私だけかも知れませんが。
本当のところはどうだったのか。
もう叔父の口から真相を語ってもらうことはできません。
何年も後に、こんな形で、思いを馳せることになるなんて。


昨日は納骨でした。
名残の桜が散る中。
「願わくば花の下にて、なーんて、ベタだけどなっ」と
叔父の声が聞こえてきそうでした。
不在の旅は、これからも続きます。
残された私たちが、歩みを止めるその日まで。
存命であれば、今日が72歳の誕生日だったのだそうです。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。