読んだもの雑記

主に漫画の感想を書いていきます

「フラワー・オブ・ライフ」完結 感想 その1

「商業誌作品はコミックスが決定稿なんだ決定稿なんだ決定稿なんだ。
好きな漫画を全部雑誌連載でおさえてたら、時間がいくらあっても足りないし。
だから、コミックスで読めばOKなんだ。
お、応募者全員プレゼントに興味なんてないんだからねっ!」
てな感じで。なるべく漫画はコミクス派でいることを心がけていました。が。
「大奥」2巻読了の余熱に浮かされて手に取った最新号「ウィングス」。
そこに載っていたのが、よしながふみ「フラワー・オブ・ライフ」#17。


※以下、ネタバレ危険。いつもよりもガッチリ書き込みます。ご容赦を!
雑誌掲載時からコミックス化にあたり、このお話内に加筆修正があります。
それはコミックス4巻のP136の2コマ目。雑誌ではこの場所に
P137の4コマめまでが入っていました。そしてP137の5コマ目がやはり加筆。
なので、この見開きは当時1ページだったものが
見開き2ページへと修正されていることになります。


P136 1コマめ「春太郎のアップ」
  ★2コマめ「さくら姉ちゃんのアップ&セリフ」
P137 1〜4コマ「姉弟のいる部屋に、父ちゃんが入ってくる」
  ★5コマめ「さくら姉ちゃんのアップ」


★マークが加筆部分です。まずはP136ページ2コマめについて。
…初読時に「このシーンにおいて、さくら姉ちゃんは悪い子!」でしたが
P136ページ2コマめのセリフで彼女に対する印象が変わりました。
ちなみにP135の2コマめのさくら姉ちゃんのセリフはこう。


「みんながあんたに かくし事してるなんて 思ってもみなかったでしょ!?」


雑誌では固まる2人の部屋にお父ちゃんが入ってきたところで
小さく姉ちゃんのアップが入り(P137の4コマめ)、
P138の1コマめで「あ…あた…あたし…!! あああ!!」と
口を押さえて号泣するシーンにつながります。
つまり、加筆されコミックスで初めて登場したP136ページ2コマめのセリフ、
唯一この場面にのみ


「みんながあんたにかくし事をしている時の『あたし』の気持ち」


が発露されるのです。それは悲痛な叫びでした。
その後、ラストに向けて春太郎に「ゴメンね…」と謝ったりはしてますが
既に秘密をバラしてしまった後のことなので、もう状況が変わっています。
で、この「『あたし』の気持ち」の表現が入ったからこそ
P186の3コマめの春太郎のモノローグがより印象深く立ち上がってきます。
ひいては「家族→春太郎」に対する構図がラストに向けて
「春太郎→家族」「春太郎→翔太」へと反転する様をも
鮮やかに浮かび上がらせるのです。


さて、次はP137の5コマめについて。こちらはもう少し印象批評。
このコマを挟むP137の4コマめとP138の1コマって、
あんまり表情変わってないですよね。
なので初読時は「秘密を言ってしまった罪深さに、自ら気づく」
という感じなのかな、と思っていました。
以前の日記でもそういう感想を書いてます。
が。P137の5コマめのねーちゃん、瞳が白いです
(瞳孔が収縮した描写ってこういう描き方でしょうか)。
このコマが入ることによって
「今まで秘密を共有してきた同志である父ちゃん」の顔を見る→
「約束破っちゃった! しかもそれがバレた!!」という、もっと幼い、
それだけに切迫した感情が描写されているのだという印象に変わりました。
しかしこのコマ、吸い込んだ息遣いまでが聞こえてくるようで胸が痛みます。


長々と書きましたが、
コミックス収録時に加筆した2コマが、物語のヤマ場となる
このシーンの緊張感を高めつつ、ラストに向けての切なさフラグの効果を
より強調することに成功しているのです。
加えて。この1ページ→見開き2ページになったことによって
どんな副次的効果が生じたか。
それはまた追って。絶対つづく。