読んだもの雑記

主に漫画の感想を書いていきます

私選短編漫画傑作集<80年代少女漫画編>

この件が先日燃えに燃えたと思っており。

でもまぁ選者の顔ぶれを見ると、むべなるかなという印象もあり。

突っ込むのはやめて、自分が少女漫画から選ぶとしたらどうかな? と思いました。

 

・さしあたり80年代に絞ります。1人1作品

・雑誌掲載分の1回で完結(前後編は除外)

・ネタバレしたらごめん(80年代作品…)

では、思いついた順に。評価順ではございませんので念のため。

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・萩尾望都「半神」/初出 プチフラワー84年1月号(小学館)

私にとってのベストワン短編ではありませんが(失礼。後追いでした)

萩尾望都のベスト短編に推す人はとても多いと思います。

そして漫画界全体で十指には確実に入る傑作短編だと思います。

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・渡辺多恵子「僕の胸も熱くなる」/初出 別冊少女コミック88年1月号(小学館)

「ファミリー!」以降、芸能界モノや新撰組には関心がなく近作は未読。

熱心じゃない読者で申し訳ないですが、19歳の時に読んだこの短編。

いつか自分が病に伏せったら、死ぬ前に必ず読み返すと言い切れる。

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・西炯子「僕は鳥になりたい」/初出 プチフラワー特別号89年12月増刊(小学館)

「故郷から遠く離れたこの土地で 彼はひっそりと心の傷をいやしていたのだろうか

孤独という代償を払って」。このネームは私の人生に一番影響を与えたフレーズかも。

描いた時22歳か…すごい…。西さんにとっても、この作品「人生の転換点」だとか。

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・明智抄「女の十字架」/初出 花とゆめ82年19号(白泉社)

ルッキズムを真っ向から扱った問題作。待望のコミックス収録(90年刊行)。

今は「十人並みからの自助努力」ですが、当時は「ありのままの君が好きだよ」で

オチないと許されない風潮だったのだ。むしろ底上げが進んだので昨今は

「美少女はやっかまれてかわいそう」(ブス≒性格ブス)の風潮へと揺り戻しが

来てるかも。時代性を切り取った作品になったかと(思い入れがあるので長文)。

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・川原泉「月夜のドレス」/初出 花とゆめ84年12号(白泉社)

83年デビューからの3年間で読み切りが17作あるのかな(Wikiより)。

「笑う大天使」等の連載も好評でしたが、カーラ教授の神髄は短編にあり…かな?

当時のスカート男子はレアキャラ。杏子姉ちゃんイイやつ。締めの地の文まで完璧。

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・柴田昌弘「第3の娘」/初出 花とゆめ80年14号(白泉社)

「タイタニック80」で颯爽と花ゆめに見参した柴田さん。ご自身が30歳のこの年が

短編の執筆量が一番多い。「盗まれたハネムーン」と迷ったけど、こちらの方が

ダークなSF。ドリー(羊)が生まれる15年以上も前に描かれた作品ですよ…。

あー少女漫画時代の短編はe-bookにはあまり展開してない感じっすね。無念。

こういう作品にこそ「傑作集」で脚光をあてるべきではないのか(机を叩きながら)。

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・高口里純「優しい瞳」/初出 別冊花とゆめ84年春の号(白泉社)

「少女漫画界の柳沢きみお」級に多彩多作。とはいえ一番お得意なのは恋愛もの…

とご本人が自負していた時期も。同時収録の「イヤリング・サマー」もよいですが

「優しい瞳」は17歳男子高校生の初恋の描写が良き。内気な子ってこんな感じだよねぇ。

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・酒井美羽「異国にて」/初出 花とゆめ84年5月増刊号(白泉社)

酒井さんご本人も一番お気に入りの作品(なくなっちゃった公式サイトで見ました)。

「マンハッタン・サンセット」他いくつか海外が舞台のサスペンスを手掛けていて

この路線で行っていただきたかったような。絵柄が色っぽかわいかったから

レディースにプッシュされたのでしょうか。ボニータの付録・野間美由紀追悼本で

野間ちゃんに「異国にて」ネームのアドバイスをもらった話が描かれてます。

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・吉田秋生「ジュリエットの海」/初出 プチフラワー82年3月号?(小学館)

「主よ、人の望みの喜びよ」はこの作品で知りました。「BANANA FISH」が

代表作の時代が長く続いてましたが、活劇にしろ日常系にしろ儚い少年はお手のもの。

「光の庭」がベスト短編だとは思いますが連載の中の1作品なので除外。

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・坂田靖子「タマリンド水」/初出 別冊ララ84年春の号(白泉社) 

シンプルな描線の水牛がかわいい。しかしストーリーの背景は何というかほろ苦い。

サラッとした筆致で描かれる、桃源郷での異文化交流と種明かし。

いろいろな傑作集に収録されている名作。

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・大島弓子「ダイエット」/初出 ASKA89年1月号(KADOKAWA)

最後のひとコマに胸を打たれた。私より年上の読者は70年代の作品の方が

お好きなように見受けられますが、私はASKA掲載の短編群が好きかな。

「ロングロングケーキ」とかもう哲学。

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・秋里和国「空が青い」/初出 プチフラワー85年6月号(小学館)

当時日本の漫画でほぼ最初期にHIV感染をシリアスに扱った「マンハッタン症候群」

からの「空が青い」。西炯子にとっての嶽野義人のように、秋里和国は友井久嗣を

描き続けた印象。コミックスでは「TOMOI」最終話として所収。んー…

「マンハッタン症候群」「空が青い」だけでもよかったような。短話で完結ルールなら

「マンハッタン症候群」がベストかな(でも「空が青い」はインパクトあったのよ)。

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・清水玲子「ノアの宇宙船」/初出 Wendy85年1号(白泉社)

表題作はシン・エヴァ「種の保存」を35年近く前に先取りしたような設定。

初コミックスの表題作は清水さん21歳の作品でしょうか。なんという完成度。

エレナが苦手→近作未読。そしてこの作品も未電書っぽい。ううう。

ノアの宇宙船―清水玲子傑作集 (花とゆめCOMICS) | 清水 玲子 |本 | 通販 | Amazon

 

・逢坂みえこ「あいすくりん」/初出 YOUNG YOU88年?(集英社)

当時は「永遠の野原」が絶好調でしたが、その後も「ベル・エポック」等

実写化も多い逢坂作品初期の大傑作。逢坂みえこ=ウェルメイド。

アマゾンでレビューなしなのツライ。こういう作品に脚光を(略

ラムネ幻燈 (クイーンズコミックスDIGITAL) | 逢坂みえこ | 女性マンガ | Kindleストア | Amazon

 

・那州雪絵「紅茶の騎士」/初出 花とゆめ 年次不詳…調べます…(白泉社)

那州さんなら「雪女」を挙げる方が多いかと思われますが、私はコチラ。

女子高生が主役の日常ものですが、共感を呼び起こすモノローグがうまいなぁと。

しかしコミックス表題作とともに電書化なさそう感半端なし。

「妖魔襲来!」「紅茶の騎士」とも、うまく発展すれば連載化だったらしい…と

どなたかのブログでお見かけした記憶。「紅茶の騎士」は「GW」休載して

花ゆめ本誌に載ったんじゃなかったかな。どちらも文庫化の際に漏れてしまったので

↓ こちらの紙本を入手しなければ読めないという。「ホントにフツーの女子高生」が

主人公かつ特殊能力者が登場しない作品って那州さん少ないから…もっと読みたかったなー。

妖魔襲来!復讐鬼 (花とゆめCOMICS) | 那州 雪絵 |本 | 通販 | Amazon

 

・TONO「約束」/初出 ぼけきょ 89年3月(うぐいす姉妹堂)

ラスト1作は同人誌から。「超人戦隊」でC翼の壁サークルの頃から大好きでしたが

この「初のオリジナル本」所収の表題作は「TONOさんに一生ついていこう」と

決意させた10ページ。綺麗ごとではない面を描ける人のことは信じられる。

那州さんも「約束」を挙げていて、わが事のようにうれしかった!

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いやー全16作。つくづく白泉社育ちだったのがよくわかる。

・少女漫画じゃないから除外しましたが高橋留美子は「忘れて眠れ」(84年)が好き

・美内すずえは70年代の作品が好き

・みんな大好き「天人唐草」も70年代

・吉野朔実は「いたいけな瞳」から選びたいところですが90年代なので…

・桑田乃梨子も90年代作品から選びたく

一番漫画を読んでた時期なので多めのリストアップになりました。

00年代以降は好評読み切り→連載化、の流れが加速するので

短編単品で選ぶのは難しそうだなー。

そのうち続き書きます。