読んだもの雑記

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「フラワー・オブ・ライフ」完結 感想 その2

昨日分の日記には「副次的効果」と書きましたが。
むしろコチラの方が本旨かもしれない。
それは「コマを描き足して1ページ増やすことによって、箱割を整える」。


※またもやネタバレご注意。
雑誌掲載時ではP139-140が見開きでした。この場合、どちらのページも
「春太郎と父ちゃん」の大ゴマが並ぶことになります。
続いてP140-141ではP140に
「春太郎と父ちゃん、はじっこにさくら姉ちゃん」の
大ゴマが入り「さくら姉ちゃんを慰める父ちゃん」のシーンで
彼らはこの話からフェイドアウト。
P142-143では「自室に戻り勉強する春太郎→クラスで
        最初に仲よくなった2人との初対面」、
P144-145では、最初のひとコマめに自室の春太郎がワンカット入り、
       「波状的に仲よくなったクラスメイトたちとの思い出の回想→
        思いもしなかった事実を突きつけられて落涙する春太郎」、
ラストP146(掲載時は片止めでした)の春太郎の叫びで
このエピソードが閉じられます。


これがコミックスでどうなったか。
P137の5コマめで「しまった!」という表情の
さくら姉ちゃんのアップ(加筆分です)。
P138-139で「全員の元に真相が明るみになる
(春太郎=自分の病状、父ちゃん=さくら姉ちゃんが春太郎にバラし、
春太郎が「それ」を知ってしまった、
さくら姉ちゃん=自分が春太郎に秘密をバラしてしまったことを自白した)」。
P140-141では1コマめが「父ちゃんの胸倉を掴む春太郎」で始まっています。
コミックス掲載時では「春太郎&父ちゃん」の大ゴマが
並んでいたところを、ここで見開き構成が変わることによって
「ページをめくるまでの間に春太郎が
父ちゃんに近づいて胸倉を掴んだ」と見せることになるので
春太郎の動きを読者に「想像させる」ことができます。
雑誌では見開きだったので、
あらかじめ提示されていたとでもいうべきか、
「順を追って」見せている印象です。
そして、この見開きで「春太郎・父ちゃん・さくら姉ちゃん」の構図が終了。
P141の5コマめ、春太郎の「……」という沈黙の後に
どんなセリフが来るのかと思いきや、次のページをめくると
春太郎は会話の流れをまったく無視して部屋から退場。
ここでも読者は春太郎のリアクションに意表を突かれるはずです。
そして実質的にP142から、春太郎ひとりの世界へと進むことになります。
P143の7コマめ、春太郎の視界の端に写った英単語の例文。
英和辞書の、ある1ページということでチラリと斜体で見えていた文章が
次の見開き最初のコマとなる、P144の1コマめで正体になります。


「He dead in the (略)」


いやー。既読なのに、ページをめくってドキッとしました。
フォントのもつ力もすごいな、と思った。容赦ない正体。過去形の文章。
そして、このコマから始まるP144-145の2ページが
回想シーンで完結することになりました。
まるで、死の前に見るという、走馬灯のように。
健康体で、何の疾患もない友人たちとの思い出を振り返った次のページで
「『普通の人の何十倍も何百倍も』、自分は…」と、友人達と、
回想から我に返った自分との隔たりを知り、
打ちのめされるのです。うーん。うまい。
個人的に感心したのはココ。
P144に登場する上記の一文が、あくまで辞書からの抜粋であったのに対し
2度目の引用となるP146の3コマめ「He dead in the 」は、
書体が統一されています。
つまりここで最早、この悲惨な一文は辞書内の用例ではなく
春太郎にとっては事実(となる可能性)として認識された証左になるのです。
うあああああ。
今、春太郎の気持ちになったような気がして、思わず叫んでしまいました。
また、ここで冷静に、よしながさんのこの加筆作業を見ると、
作中のワンシーンが現実世界でまるで反復されているのに気がつきます。
とりあえず、つづく。