読んだもの雑記

主に漫画の感想を書いていきます

よしながふみ「仕事でも、仕事じゃなくても」感想

読みました。

「よしながふみ自身によるよしながふみスペシャル 本人全作品解説付」

(昔の月刊カドカワの特集名みたいだな)。

私がよしながさんを初めて知ったのは

別冊ぱふ「コミック・ファン」1998年3号。

著者インタビューが何本か載っていて西村しのぶ・西炯子目当てで買いました。

つまり漫画より先に本人インタビューを読んだわけですが

その時のインタビュアーが山本文子氏。

今回の本の書き手と同じ方です。

ほぼ四半世紀にわたる交流。安心のクオリティ。

当時の最新刊は「こどもの体温」で

「いつか歴史ものが描きたい。ホー・チ・ミンが美しいおじいさんで。

ヴェトナムのこと全然知らないんですが」なんてコメント出してました…。

 

家庭環境を主とした生育歴から漫画遍歴、そして作品解説へ。

よしながさんは私の3歳下なので、まぁ同世代。

デビュー以前に読んだ漫画家さんの作品は、何らかの形で私もほとんど読んでました。

よしながさんが強く影響を受けた、と断言していて

未読なのは「PALM」シリーズの伸たまき(当時)くらいかな。。。

よしながさんの30代オーバー推しは「PALM」のカーター(32歳)からだとか。

同人作家さんの名前はほとんど出てこず、唯一挙がったのが

「City-Aの省さん」だったのマジワロタ(がゆん氏・CLAMP等は

ご本人たちが商業デビュー済みタイミングのところで触れられています)。

「CARNIVAL」、これ私が初めて定額小為替で買った同人誌だった気がするなぁ。

省さんの優しいタッチの絵が大好きでした。

なるほど、線の細さが後のよしなが絵をほうふつとさせるような?

上製本の作りが商業と遜色ない出来で、傷めないよう

カバーの上から手持ちの紙でカバーをかけた記憶があります。

バブル期半端ない。当時の豪華本は金かかってたなー。

ゆるい時系列でエピソードは進んでいて

荒木飛呂彦(バオー来訪者)と安達哲(さくらの唄)に挟まれて、というのがまた。

 

とか書きつつ、最初期のよしながBLは未読でございます。

「こどもの体温」以降から読んでる感じですね。

作品未読でも「内部進学者が悪者っぽくなりすぎたから、連載終了後の同人誌で

バランス取りました」等、作劇上の解説があったりして読み応え十分。

そう、同人誌作品にも言及しているのが素晴らしい。

そしてオリジナル作品の造形も銀英伝キャラで解説されると

なんとわかりやすいことか。

 

「西洋骨董洋菓子店」で大ブレイクと思いますが

商業誌デビューの頃から一貫して「これで大丈夫かな…?」と

おそるおそる感があるのが意外でした。

主に「掲載誌のカラーに合ってるか?」をすごく気にされていたようで。

「日出処の天子」を連載していた白泉社でなら「大奥」はアリか、と

お思いになったと。そりゃまあね…。

 

堺雅人の有功についてのコメントとか、実写化にまつわるエピソードもちらほら。

一気に通読してしまいました。

80年代白泉者は、ところどころで差し込まれる

「男女逆転にしても柴田昌弘先生の『ラブ・シンクロイド』だとか」という

コメントに触れるとグッときてしまう。

たがみよしひさのWINGS掲載作品=「それさえもおそらくは平穏な日々」だなとか

言及された内田春菊作品は「幻想の普通少女」or「物陰に足拍子」かなとか。

記憶の底に沈んでいた作品が、胸の中に浮かんで回っています。

もう走馬灯を見てるのかと思うくらい。

よしながさんと同時代を生きてきてよかった。

夏休みに再読しようと思います。まずは初読の感想まで。